木材の乾燥方法KD材とAD 材 | 優家団 代表取締役 鎌田達夫 |
住宅の強度や耐久性は、ある一定レベル以上の設計であれば、後は柱や梁など使用する構造材の種類や乾燥方法によって決まってきます。 乾燥方法には大きく分けて次の2種類があります。 KD材は人工乾燥材で「Kiln Dry Wood」の略。温度や湿度、風量などを調節できる大きな釜に入れて短期間で乾燥させます。 AD材は天然乾燥材で、「Air Dry」の略。原木から製材されて、短くても1年近くの自然乾燥が必要です。 |
戦後しばらくは天然乾燥木材が主流でしたが、現在は乾燥が2週間から1カ月程度で済むKD材が主流にありつつあります。 KD材は木材の含水率を強制的に下げることができ、木材の狂いを極力抑えることができるので、乾燥コストがかからず狂いの少ないKD材は使う側にとってはまことに便利で使いやすい材木なのです。 建具などの取り付けはピタリと納まり、壁面のひび割れなどもなくなり、クレームも少なくなるという結果につながります。 しかしKD材に仕上げるためには加熱が必要ですが、木材の細胞は50℃以上に加熱すると組織は死滅します。 木そのものが持つ「粘り」「しなり」を支える樹脂は流れ落ち、木の香りも吸湿能力もほとんどなくなり、強度も弱くなってしまうのです。木の生命力を感じない木材…、割り箸を想像していただけるとわかりやすいと思います。 |
KD材 |
強さと耐久性に欠けるKD材 | |
KD材のことを分かりやすく解説しているのが、「板倉建築住宅」で知られている筑波大学の安藤邦廣教授の言葉です。 「人工乾燥の木材は細胞が老化した老人の肌のようなもの。パサパサしていて艶もないし張りもない。呼吸しない。 それに対して自然乾燥の木材は若者の肌のようなもの。収縮や膨張などの悪さもするが艶やかで張りもあるし呼吸する。それに、これから壮年期にかけて更に強くなる。だから何百年もの間、家屋を支えることができた。 それに対してKD材は、強制乾燥をかけた直後から劣化が始まる。しかしそれでも、30年程度は問題なく家屋の建材として使用に耐えることはできる。 今の日本の住宅は大抵30年程度で寿命が来るから、それだけ持てばよいというのなら、KD材でも問題はない。 ただし、かつての日本の民家のように、建て替えの際に木材を再利用することは絶対にできない。劣化した抜け殻のようなものだから。」 |
粘りがなく揺れにも弱いKD材 |
最近の住宅建築では、家そのものを支える重要な柱や梁などの構造材にも、KD材が多く使われるようになってきました。外国からの輸入も増えつつあり、その梱包には「KD」の表示が見られます。 筑波大学の安藤教授も解説しているように、KD材は、強制乾燥をかけた直後から劣化が始まり、木としての堅さはあるものの弾力性に欠けるという弱点があります。 このような木材を構造材として使っていれば、地震などの揺れを吸収することができず、設計上の強度を保つこともできません。 |
音楽で乾燥させる「音響熟成木材」 | |
施工業者は自然乾燥木材の良さはよく分かっているはずです。 しかし乾燥に時間がかかり、乾燥途中で割れたり変形したりしてロスも多いためKD材に比べて割高です。 しかも施工業者は木のクセを読み、上手に使いこなす技術も求められます。 優家団が使うカイケンの木材は、木本来の質を保ちながらコストをかけないユニークな乾燥方法で生まれた木材。 その名も「音響熟成木材」です。 木は伐採されてもその細胞は生きています。カイケンでは伐採して製材した木を常温熟成庫に運び込みます。 50℃以上になると木の細胞は完全に死滅してしまいます。生きている木がもっともリラックスできるのは38℃前後と考えられています。 カイケンの常温熟成庫では季節に関係なく庫内の温度を38℃前後に保ち、合わせてクラッシック音楽(バッハの曲)を流しているのです。 この方法を初めて聞いた時は「材木にクラッシック音楽を聞かせるの?」と失礼ながら笑ってしまいました。 よくよく説明を聞き、私は「音響熟成木材」の原理を次のように理解しました。 スピーカーから流れる音楽は空気中を伝わる「高~低音さまざまな波動」となって木材に含まれる水分を刺激します。 波動は水分だけをゆっくり押し流し、木材の脂分や防菌・保水・保湿作用などの働きを持つエキスは天然乾燥木材のようにそのまま残ります。 「音響熟成庫」では24時間常にクラッシック音楽が流され、その波動が木材を刺激し続けます。 だから昔ながらの天然乾燥より短かい期間で、昔ながらの天然乾燥=生きた素材に仕上げることができるのです。 「音響熟成木材」は、圧縮、引っ張り、曲げなどの強度性能についても、第三者機関による調査の結果、高い評価を得ています。 |
生きている木だから三代永住も可能 | |
「今の日本の住宅は大抵30年程度で寿命が来るから、それだけ持てばよいというのなら、KD材でも問題はない」。 これは先に説明した「板倉建築住宅」で知られている筑波大学の安藤邦廣教授の言葉です。 確かに、劣化が始まっているKD材を構造材として使い、化学的製法で作られた接着剤で貼りつけた合板や集成材を多用した家は、30年程度が限度でしょう。 しかし細胞が生き続けている「音響熟成木材」なら木としての強度や弾力は30年以上経っても変わりません。 家を支える骨組みや無垢の床材は、多少変色しても木としての機能はそのままです。 可能な限り自然の資材を使う優家団の家は、基本的には伝統的な昔の家。 先の先まで考えたプランであれば三代永住も問題ありません。 |